なぜ特定技能人材は辞めてしまうのか?定着率を高める5つの具体策

投稿日:2025.07.16 更新日:2025.07.18
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人手不足に悩む日本企業にとって、特定技能人材は即戦力として欠かせない存在です。しかし、導入当初に期待したほど定着せず、短期間で退職してしまうケースが多く見受けられます。NINAITEが調査したコロナ禍以降のデータによると、業界の退職率は30〜40%。一方、弊社がサポートした外国人人材の3年以内の退職率は約20%で、近年はさらに改善し離職率を下げているものの「なぜ辞めてしまうのか?」という点は、依然として外国人雇用における重要な課題の一つです。

本記事では、NINAITE外国人人材事業部 本部長・ 宮城へのインタビュー結果をもとに、「特定技能人材が辞める背景」と、「定着率を高めるための5つの具体策」を紹介します。すでに受け入れを始めた企業・支援機関の皆様が抱える悩みや不安を踏まえ、NINAITEならではのデータ管理・改善方法を交えながら解説します。

外国人人材事業部 本部長 宮城

1. 特定技能人材が辞める主な原因

まずは、NINAITEの実データとヒアリングをもとに、「なぜ辞めてしまうのか?」の背景を整理します。

1.1. 「転職」が最多

  • 背景

特定技能人材の退職理由で最も多いのが「転職」44件。より良い条件やキャリアアップを求める動きが活発化していることを示しています。賃金・役職・勤務地などで複数の企業を比較検討し、より高待遇の職場へ移る傾向が顕著です。

  • 地方→都市への移動、憧れ

北海道や地方拠点で働いていた人材が、「都市部と比較した給与水準の低さ」「過ごしやすさ」「遊び場が少ない」といった理由から関東・関西などへ移動しています。都市部には東南アジアからの仲間が多く、生活の利便性やコミュニティ形成がしやすいためと考えられます。

1.2. 「登録会社変更」のため

  • 背景

コロナ禍以降、求職者の希望やキャリア観が多様化する中で、既存の紹介先よりも「より自分に合った職場」を追求し、別の支援機関を選択して転職を決断したが29件。

  • より自分に合った支援機関を求める動き
  • 特定の仕事内容やエリアを優先する希望

「同じ特定技能でも、サポート体制や業務内容、寮・社宅条件が各登録支援機関で異なるため、個人がより条件の良い登録会社へ移りたい」と考えることが増えています。

1.3. 「仕事内容への不満」

  • 背景

「仕事が好きじゃない」という理由が5件。

  • 業務内容と希望のミスマッチ
  • 体力的に厳しい(立ち仕事・力仕事が多い)

NINAITEでは、入社前に十分な業務理解を促す仕組みを整え、日々改善を重ねています。

こうしたケースは大変稀ではありますが、「想像していた仕事と実際の業務のギャップ」が退職につながるケースも必ずしもゼロではありません。

1.4. 「グループ会社への異動」

  • 背景

「グループ会社へ異動」が4件、「他拠点(グループ)への異動」が4件。いずれも「キャリアパスの一環として社内異動」ですが、これがきっかけで「支援対象外になる」「待遇が変わる」などの理由で一旦退職扱いとなるケースです。

企業内でのキャリアパスが明確になっていないと、「異動後の待遇・支援の違い」に不安を覚え、離職が発生する可能性があります。

1.5. その他 

その他、個別の事情によって退職してしまうケースが稀にあります。

2. NINAITEのデータ管理・調査体制

まず、NINAITEでは「TSUNAGITE」という自社開発クラウドシステムを活用し、退職理由や離職率を数値化・分析しています。その仕組みと管理方法を解説します。

2.1. TSUNAGITEで「退職理由」を数値化

  • 退職申請時のフロー
    • 特定技能人材が「退職希望」を申し出る
    • 担当支援者がTSUNAGITE上に退職理由を記録
    • 企業・支援機関ユーザーは、いつでもリアルタイムで「転職」「登録会社変更」「失踪」「業務不満」などの割合を確認

2.2. データを基にした「動向分析」

  • 地域間ギャップ分析
    • 北海道・東北地域は「賃金の低さ」「寒さ」「余暇の選択肢の少なさ」など、離職率が全国平均より高い傾向。
    • 関東・関西は「給与水準の魅力」「コミュニティの多様性」が定着要因。
  • 業種別離職率比較
    • 外食・飲食製造:転職への流動性が高く、他業種から転職してくる人材も多い。
    • 介護:現場の人手不足緩和で即戦力を求めがちだが、仕事内容のきつさ人間関係のギャップで離職が発生しやすい。
    • 製造業:体力的な負担と賃金の低さが離職要因。

2.3. 退職後のフォロー&「転職支援プロジェクト」

雇用していた外国人が退職となったクライアント様につきましては、新たな人材採用時の初期費用を特別価格にてご案内させていただきます。

    貴社の再雇用や人材確保の課題解決に引き続きお力添えできるよう、全力でサポートしてまいります。

    • 全国の地域に根付いた施策

    NINAITEは福岡や東京など日本各地に支店を設置し、クライアント様と日本で働きたい外国人人材の最適なマッチングの選択肢の拡大に努めています。

    3. 定着率を高める5つの具体策

    上記の分析を踏まえ、「特定技能人材が辞めてしまう主な原因」を改善するための5つの具体的施策を解説します。NINAITEのノウハウや事例も交えつつ、すぐに取り組める内容に絞りました。

    3.1. 採用段階での「ミスマッチ」を防ぐ:業務内容・条件を明確化する

    • 採用要件に「実務経験・体力要件・現場適性」を盛り込む

    単に「日本語N4以上」「特定技能評価試験合格」だけではなく、「現場で必要な体力水準」「具体的な作業手順」を明示。

    応募要件に記載する内容の例:

    • ビルクリーニング:「階段掃除:10階以上」「高所作業の経験の有無」「清掃用具の取り扱い経験」など
    • 介護:「高齢者とのコミュニケーション経験」「排せつ補助の経験の有無」など
    • 農業:「重機使用経験の有無」など

    3.2. キャリアパス・昇給制度を明確化:将来のビジョンを示す

    • 特定技能1号→2号取得支援プランを提示
      • 例えば、「特定技能2号取得後には家族帯同が可能」「永住申請の道が開ける」というキャリアモデルを入社前に共有。
      • 宮城は志高い人材ほど、将来のビジョンがあると定着意欲が強まりますと話します。
    • 社内スキル評価制度を導入し、「評価→昇給」の道筋を可視化
      • 「清掃スキル:60点→75点」「日本語会話:55点→65点」など、貴社の上司と外国人労働者、弊社の外国人支援担当者が項目ごとに数値を入力。
      • 数値化結果をもとに昇給条件を明文化し、採用フェーズの面談時に必ず共有することで、人材のモチベーションを高めます。

    3.3. 生活面・コミュニケーション支援を強化:孤立感を防ぎ、安心感を醸成

    • バディ(メンター)制度の徹底

    NINAITEでは、現地語が話せる外国人支援担当者+日本人企業支援担当者の2名体制で伴走。

    初対面で母国語が通じるメンターがいる安心感は大きく、来日ストレスを軽減すると同時に「相談しやすい環境づくり」を徹底しています。

    • 定期面談を「問題把握+改善アクション」にまで昇華

    NINAITEの定期面談は、入管向けの形式的チェックに終わらず、生活・キャリア・メンタルまで深掘り

    TSUNAGITE上で面談結果を「スコア化+グラフ化」し、企業側にもリアルタイムで共有。たとえば「語学不安度:40点」「人間関係不安度:55点」などを可視化し、問題の早期発見→改善策提案を即座に行います。

    • 対面でのコミュニケーションと関係性の構築

    競合他社の中には、体制の都合で現場のスタッフの手が回っておらず、十分な価値提供ができていないケースも多いようです。人材紹介会社の担当者が現場に来ないために、外国人からの不安と不満の声があったり、外国人人材を雇う施設も同様にそれを感じたりしている現状があります。

    外国人人材やクライアント様からの細かい要望などへの対応に対して、その場しのぎで対応が後回しになっている競合他社も一定数あります。

    諦めに近い声が現場から上がっており、臨機応変さやスピード感に欠ける対応は重要な課題です。

    これらの現場の声も踏まえ、NINAITEでは上述のTSUNAGITEの活用や下記の定期面談でご紹介しているように、頻繁に最新状況を把握し、直接のコミュニケーションによるフォローアップを強化しています。

    また北海道真狩村でのNINAITE主催BBQパーティーのように、地域の日本人住民を巻き込んだ交流会を実施。

    地方では「孤立感」が離職要因になることもあり、「顔が見える関係づくり」によって、「ここで頑張りたい」「地域に受け入れられた」という安心感を醸成します。

    地域全体として、異文化理解の促進にもつながります。

    3.4. 福利厚生の拡充や給与以外の満足度を向上させる

    • まかない・食費補助の導入
      • 外食業や飲食製造業では、「まかないがあるから働きたい」という応募動機があるケースも見られます。
    • 社宅手当・家具付き寮の提供
      • 初期費用が大きなネックになるケースを踏まえ、「敷金・礼金を企業負担」「家具家電付き社宅を用意」することで、外国人スタッフの生活不安を最小限に抑えます。
      • 祖国にいる家族に仕送りをする外国人労働者にとっては、オンラインでの家族とのやりとりが仕事のモチベーションになることが多いです。よって、プライバシー空間や安定したネット環境のある住居、部屋を提供することもポイントです。

    3.5. 定期面談&フォローアップ体制を強化:早期課題発見→改善サイクルの構築

    • 「入社直後~1年目にかけた集中フォロー」
      • NINAITEでは、特定技能人材が在留資格更新(最大1年)を迎える「4~6か月以内」に面談を実施し、更新時の不安を解消すると同時に職場の悩みを吸い上げます。
      • その後、「3か月ごと」に面談を継続し、4回以上の面談データをTSUNAGITEに蓄積。
    • 「企業・支援機関」が合同で対応
      • 面談結果をもとに、企業(人事・現場責任者)、NINAITEの外国人支援チームが合同で対応策を検討します。
      • 例:「日本語不安度80点」「残業時間が月40時間を超えた」「送金が遅延中」などを見える化し、翌月中に改善策を提示。

    宮城によると、上記に加えて、「成功事例の多い競合他社や他の自治体から積極的に学ぶこと」も時には必要です。

    NINAITEでは、地域全体や日本全体として外国人労働者の離職率を下げるため、こうしたグッドプラクティスを分かち合い協力する「横のネットワーク」作りにも尽力しています。

    具体例として、他社での外国人労働者の現状を見学したり、弊社が実際に担当したモデルケースをもとに企業様のニーズに沿ったコンサルティングをしたりなどを行っております。

    NINAITEでは定期的に研修会を実施 メンバー1人ひとり積極的に学びます

    4. すでに受け入れている企業・支援機関向けセルフチェックリスト

    以下のチェックリストで、貴社はどのような結果になるでしょうか。まだ実施できていない項目があれば、優先度の高いものから着手してみてくださいね。

    No.チェック項目実施状況(○/×)課題・改善案
    1【採用】実務経験・体力要件・現場適性を明示した応募要件を提示している
    2【採用】応募者向けに「現場体験」や「ショートインターン」を実施している
    3【報酬】昇給制度・昇格ルートを明文化し、応募~入社後に共有している
    4【キャリア、報酬】特定技能2号取得支援や永住・家族帯同など将来像を示せる待遇設計を行っている
    5【コミュニケーション】「バディ制度」「月1回以上の交流会」を実施している
    6【コミュニケーション】日本語学習サポート(社内レッスン・オンライン教材)を整備している
    7【福利厚生】まかない・食費補助など、応募動機になる施策を導入している
    8【福利厚生】社宅手当・家具付き寮・交通費補助など、初期生活支援を実施している
    9【フォローアップ】入社後3か月以内に複数回の定期面談を実施し、フォローアップ体制を整備している
    10【フォローアップ】面談結果をNINAITEなど専門機関に相談

    5. まとめ:離職率低下と企業成長の両立に向けて

    特定技能人材の定着率を高めるには、以下の5つの視点をバランスよく整備することが重要です。

    1. 採用時のミスマッチ防止:業務内容・条件を明確化した上で、体験を通じて応募者が納得できる仕組みを作る。
    2. キャリアパス・昇給制度の提示:特定技能2号取得や昇格モデルを示し、将来のモチベーションを維持する。
    3. 生活面・コミュニケーション支援:バディ制度や定期面談、地域交流イベントで孤立感を防ぐ。
    4. 福利厚生の充実:まかない・社宅手当・送迎サポートなど、給与以外の満足度を向上させる。
    5. 定期面談&フォローアップ体制:面談結果を数値化し、企業・支援機関・産業医で改善策をスピード実行する。

    これらを着実に実行すれば、特定技能人材の離職率を大きく下げ、生産性やサービス品質の向上につなげることができます。すでに受け入れを始めた企業・支援機関の皆様、ぜひ上記のリストをご活用くださいませ。

    この記事を読んでいただいた企業・支援機関の皆さまへ


    「特定技能人材がすぐ辞めてしまう原因を把握し、定着率を高めたい」──そんなニーズについて宮城は、「NINAITEはTSUNAGITEを活用したデータ管理現場密着型アドバイス日本語学校・地域連携など、他社にはない付加価値でお応えします。外国人雇用は環境整備や異文化理解が不可欠です。少しでもお困りごとがございましたら、まずはNINAITEにご相談ください。未来の戦力となる海外人材を、安心して日本で活躍させる一歩を、ぜひ一緒に踏み出しましょう。」と力強く語っています。

    もし「自社だけではノウハウが足りない」「さらなるアドバイスや改善策を知りたい」と感じられる場合は、NINAITEまでお気軽にご相談ください。人手不足を本質的に解決しつつ、優秀な特定技能人材を長期的に活かすためのノウハウと支援体制を、これまでの実績をもとにご提案します。

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    https://ninaite.ne.jp/contact/

     

    よくある質問(FAQ)

    すでに外国人材を受け入れている企業が取り組むべきセルフチェックリストには何がありますか?

    採用条件の明示、現場体験や短期インターンの実施、昇給制度の共有、将来像の示し方、コミュニケーションと交流会の実施、生活支援策の導入、定期面談の実施と結果の相談などの項目があります。

    外国人材の離職を防ぐためにはどのようなサポートが効果的ですか?

    母国語話者の支援担当者や日本人支援担当者によるバディ制度、定期的な面談による問題早期発見と改善、地域交流イベントの実施、福利厚生の充実、早期フォローアップの継続が効果的です。

    定着率を高めるための具体的な施策にはどのようなものがありますか?

    採用段階でのミスマッチ防止、キャリアパスや昇給制度の明確化、生活面やコミュニケーション支援の強化、福利厚生の拡充、定期面談とフォローアップ体制の強化が挙げられます。

    企業はどのようにデータを活用して退職理由を把握しているのですか?

    NINAITEではTSUNAGITEというクラウドシステムを活用し、退職申請時に退職理由を記録し、リアルタイムでその割合や動向を分析しています。

    なぜ特定技能人材は辞めてしまうのか?

    特定技能人材が辞める主な原因は、転職、登録会社の変更、仕事内容への不満、グループ会社への異動、その他の個別事情によるものです。

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